バレンタインに『シャンパーニュとチョコレート』という変な定番について。

日本では、バレンタインデーには「チョコレートとシャンペーン」という おかしな組み合せが定着しているそうな。最初の仕掛け人はチョコレート製造業者で、昭和30年台に遡る。しかも日本では何故か「女性から男性へ」チョコを贈るという変なおまけまでついた。欧米では、もちろんそういう習慣はなく、男性から女性へプレゼントをする方が、普通だろうか。もちろん、子供が先生に、あるいは親友同士がバレンタインを交換したりという友情の証(あかし)的なノリもある。近年では、ちょっと贅沢にシャンペーンで祝おうという人も増えた。そこで出てきたのが「チョコレートとシャンペーン」という全くいただけないペアリングだ。 ワインのペアリング(マリアージュ)の理論を学ぶまでもなく、苦味と甘みの強いチョコレートと、歯にしみるほど酸味が高いシャンペーンを一緒に味わうとどうなるかは、想像がつくだろう。例えると、チョコレートケーキと酢の物を一緒に食べるようなものだ 。シャンペーンが、ただ苦くて酸っぱい液体になる。これでは勿体ない。折角頂いたチョコレートも、奮発したシャンペーンも美味しくいただくには、ペアリングを別々に考えることだ。つまりはチョコレートが美味しくなるワイン、シャンペーンに引き立つ食べ物を合わせれば良い。 一般的にチョコレートに合わせる定番は、ポルトワインだが、 シェリー酒で最も甘いペドロヒメネス(Pedro Ximenez)や、オーストラリアが誇るスティッキー(ブラウンマスカットで作るRutherglen)もなかなか面白い。この二つは、余りに甘くて、お酒だけ飲んでいるとちょっと閉口するが、チョコレートとペアリングをすると、甘さが緩和される。とはいえ、ペアリングのコツは、 飲みのもの甘さが、食べものの甘さより控えめであることだ。でないと、飲み物が食べ物の味を圧倒してしまい、マリアージュの意味がなくなってしまう。個人的な好みは、ルビーポルトにビターチョコ。中にラズベリージャムなんかが入っていたら、更に相性が良くなる。ポルトの中でもフルボディで樽が効いたルビーポルト(余裕があれば、ヴィンテージやLBVなら更に贅沢)は、チョコレートの甘さと苦味を中和しながらも引き立ててくれる。 友人のソムリエは、ラズベリーソースのチョコレートケーキにはこれが定番だ!と言い張る。ホワイトチョコはねっとりとしたバターのような食感と、控えめな甘さがあるので、恐らくマスカット系で、残糖分が高いデザートワインが良いのではないか?或いは新世界のアイスワイン(カナダやNYが有名)も合うかもしれない。と言っていたら、日本からの出張者と現地のアメリカ人男性軍が、「甘いワインは苦手だ〜!デザートもパス」などと駄々をこねたので、全員に別々のデザートワインとケーキを注文して食べさせた。結果は「絶賛」の嵐。曰く。「不思議なことに、ケーキもワインも甘さが優しくなった」「これなら美味しく食べられる」「目から、ウロコ!」などなど。 シャンペーンは万能ワインで、チョコレートやデザート以外なら、基本的には何にでも合う。サンフランシスコのソムリエの間で一頃流行ったのが、シャンペンとポテトチップス。ポテチの油と塩分が、シャンペンの酸味と泡にぴったりで、食べ始めると止まらなくなる。だから、天ぷらは勿論、揚げ物とシャンペンの相性は抜群だ。ところで、シャンペンばかりを語っているが、世界には素晴らしい泡ものがあふれている。まずは、泡王国のイタリア。比較的甘口で泡が強くないモスカト(或いはアスティ)から始まり、穏やかな口当たりのプロセッコ、高級品のフランチャコールタ、そして赤ワインの泡ものの代表であるランブルスコや、珍しいところではブラチェッタダキなど。スペインのカヴァも格安から高級品まで幅があり、フランスでもシャンペーンと同じ製法でつくるクレマンは割安で、全国各地で特徴のあるものを生産している。勿論、新世界のアメリカ(カリフォルニア)、オーストラリア(タスマニア)、アルゼンチン(メンドーザ)南アフリカ(キャップクラシック)などのスパークリングワインも素晴らしい質だ。さて、今年のバレンタインデーは、何を選ぼう。

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