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ボージョレはボージョレでも、、、

ボージョレの畑   今年もやってきた!ボージョレヌーボーの解禁日。何を解禁するのやら、、とワイン通が毎年苦笑いする季節である。英語では(というか日本では)リリースと謳っているようだが、いずれも「法律で禁じられていたものを解き放つ」という意味合いがある。「何と大げさな!」と顔をしかめる有識者や常識人はさておいて、「ヌーボーって、そんなにすごいの?」と勘違いをしかねない一般消費者のために、今年もまたボージョレヌーボー(BN)について紙面を割こうと思う。 ボージョレといえば、ガメイ(Gamay) とブドウ品種を知っている人はワイン通。生産地はブルゴーニュの南はずれ、ローヌ地方に接する広大な地域である。世界のブルゴーニュ専門家たちは、「ボージョレはブルゴーニュではない」と言い切るが、その根拠は、 温暖な 気候、花崗岩土壌、異品種(95%ガメイ)という北と全く異なるテロワールだ。実際ボージョレ地方は小高い丘が多い美しい土地だが、それも南北を半分に分けた北の優良地域だ(写真はすべて北のヴィラージュ地域)。そちらの土壌は水はけの良い花崗岩が主で、ヌーボーとは無縁の、「本来の」ボージョレワイン(ヴィラージュ、クリュ)の土地柄。ヌーボーを大量生産するのは、 南半分の広大な地域である。土壌は、水はけの悪い粘土質、土地は平坦、しかも更に暖かい地域と聞けば、有識者でなくてもブドウの質が知れる。こちらのガメイは早く育ってしまい、質もイマイチ。収穫が早いと、翌年の出荷まで、換金(ワインを売って得るお金)できない。しかも北の「ヴィラージ」アパラシオンと違い、単なるボージョレワインだ。末端価格もたかが知れている。 ボージョレはボージョレでも、、、 ボージョレはボージョレでも、、、 ということで、生産者たちが時の政府に泣きつき、収穫した直後 に「新酒(ヌーボー)」として醸造し、すぐにワインを売っても良いというお墨付をもらった。要は、収穫してからすぐに、現金を確保する手段を得たというわけだ。だからワイン造りもいたって簡単。採ったブドウを丸ごと大きなタンクに入れるだけ。 カルボニック手法と言われる醸造法で、 4日ほどでアルコール度の低い飲料ができ上がる。後に色々な事情で、11月第3木曜日に一斉出荷することになり、この規制が『解禁』という概念を生んだのであろう。よく考えたら、この言葉は、待ちわびる消費者に対するリリースと言うより、生産者が現金を回収できる「お預けからの解放」だといううがった意見もある。 ボージョレはボージョレでも、、、 ヌーボーを世界的なブランドに押し上げたのは、勿論、ワインの質ではなく、その賢いマーケッティング戦略だ。最初は新しいモノ好きなパリジャン(ヌ)をターゲットに、パリのビストロに一斉大量出荷をして、「ヌーボー到着!」と騒ぎ立てた。80年代からは輸出市場にターゲットを絞り、大手のジョルジェ・デュブッフが先頭に立って、各国の大手酒造メーカーや流通網とパートナーを組み、大々的なヌーボー興行を打ち始める。中には解禁日に芸能人を動員して、大パーティーを組むという酔狂な国まで現れる始末だ。米国、日本、ドイツが3大市場と言われたが、ワインの消費が定着していく過程で消費者の目も肥えてきたのか、今では日本だけがヌーボーの大贔屓筋と言われている。しかも日本では数ユーロのヌーボーが3千円以上するという法外さだ。比して米国では5〜8ドルというところだ。が、ボージョレと入れて検索するとヌーボーではなく、きちんとヴィラージュのページが出てくるあたりが、現在の米国ワイン市場の成熟度を示している。 ボージョレはボージョレでも、、、 実際、ボージョレヴィラージュという北に位置する10の村で作るワインは、ヌーボーとは全く別もので、風味が深く、美しい果実味と穏やかな味わいの名酒だ。欧米のソムリエは、食事とペアリングしやすいボージョレを高く評価する。ヌーボー名声?の割を食って、ボージョレの名前を冠したヴィラージュワインは、未だに$20-25という割安で、プロのおすすめワインでもある。ところで、ヌーボーは超早飲み用に作られたシンデレラワインなので、クリスマス前までには飲みきること。さもないと、かぼちゃに化けてしまうかも、、、。 (そして来年は、こんな記事を書く必要がない市場になっていますよ〜に!)

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